波の中に溶けていった



今回の僕の旅には2つの目的があった。

一つは、写真家相原正明さんが世界遺産クレイドルマウンテンに滞在中のドキュメントを撮ること。
二つめは、久々に気合いを入れて風景写真を撮ること。

この二つめの風景写真を撮りたくなった理由は、正直にいうとフォトブロガーのNATUREAさんの影響だ。
自分の持つ写真の幅を広げていこうとする彼の姿勢を毎日見ているうちに、僕も何かしなくてはいけないという気持ちが沸々と煮えたぎってきた。
そこでまず僕がとった行動は、彼が一番よく使うレンズを購入したことだ。
そう、僕は感化され易い人間なのだ。(情けない、、、、)
買ったレンズはシグマの17mm-70mmf2.8-4.5。
普段はキャノンのLレンズを使っている僕にとって、キャノンではないレンズを使うのも、こんなに安価なレンズを使うのも正直いって不安で一杯だった。
でも、NATUREAさんはこのレンズであんなに素晴らしい写真を撮っているではないか。
この事が妙に僕を勇気づけた。

相原さんと同行中は連日の大雨。
体中に這い上がる吸血ヒルと格闘しながら、おニューのレンズも僕もびしょ濡れの毎日だった。
相原さんと一緒に写真を撮れるだなんて、ファンの方々にとってはさぞかし羨ましい話しだろう。
(この幸運をブログで皆さんにお返しします。えっ、足りない?)
今回面白いと思ったことは、相原さんの撮る横で、僕が同じ被写体に、同じようにレンズを向けても、まったく違うものができるということだった。
相原さんがデジカメで撮った画像を見せてもらうと、うぉ〜っ、と思うのに、自分の撮ったものを見るとかなりガッカリする。
同じ場所にも関わらず。
さすが相原さん、写真の神に選ばれた男。
ここで僕なりのいい訳をしておこう。
やはり写真は自分の心に触れたものを撮らないとダメなのだ。
という訳で、相原さんと同行中はほとんど風景写真を撮らなかった。

相原さんと別れた後、一人で行ったロースベリーでの最大の目的は霧を撮ることだった。
しかし、僕はこの町に滞在中、連日のバタバタで霧を撮る機会を逃した。
僕は本来の目的をすっかり忘れ、相変わらず人間を撮っていたのだ。

タスマニアのウェストコーストといえば、タスマニアに住むほとんどの人たちが、じめじめした雨の天気と荒れ狂う波が叩きつける海を連想する。
僕もやはりそうだ。
霧を諦めて西海岸の海を撮りに出かけた。
ミックのポートレイトを撮った後に出かけたのですでに遅い時間だった。
秋吉台のような風景が広がる中、そこに伸びる一本の真っ白な砂利道を半信半疑で運転し続けた。
標識も家も電信柱の一本も無い道だった。
時間はすでに午後4時を回っている。
後一時間もすれば暗くなってしまう。
正しい道を運転しているのだろうか、と思っていると突然視界が開け、眼下には深くどんよりした青の海と、シャック(掘建て小屋)で成り立っている小さな村と呼んでもさしつかえの無い空間が広がっていた。




f0137354_1184286.jpg





車から降りると強風に身体が煽られた。
小雨も降っている。
滅多に使わない三脚を車から引っぱりだし、真っ直ぐに、誰もいないビーチに向かって歩き出した。
急がないと、暗くなってしまう。
頭の中ではこの声が繰り返し聞こえる。
三脚を砂浜に立て、今回ほとんど使っていなかったキャノン70mm-200mmf2.8をカメラにセットした。
心を落ち着けて海を見ると、波はまさに生き物のようにうねっている。
地球が息を荒げ、その腹部が繰り返し上下しているようだ。
波を、この地球の呼吸を捉えようとISOを400にセットした。
しかし太陽の光はこの強風に吹き飛ばされているかのように、どんどんと明るさを失ってゆく。波の動きを止めるシャッタースピードを稼げない。
普段ならば焦るところだが、この時はただただ波の力強い動きに心を捕われていた。
この波を見ながら、サリーナのこと、ポールのこと、ミックのことなどを知らぬ間に考えていた。




f0137354_125173.jpg





f0137354_1252018.jpg





f0137354_1255156.jpg





f0137354_126115.jpg





たぶん、風と波の音がそうさせたのだろう。
たぶん、それをそれらのことを一度整理するために、僕はここに立っていたのだろう。




最初は、この波のように荒れていた僕の心も、次第に泡となり、細かいしぶきとなり、最後には砂浜で波に打たれ続けている石のように波の中に溶けていった。




f0137354_127591.jpg





f0137354_1282657.jpg





f0137354_1284323.jpg





f0137354_129340.jpg





f0137354_1292011.jpg





f0137354_1293896.jpg





f0137354_1295834.jpg





f0137354_1305137.jpg





気がつくと、ビーチはすでに真っ暗だ。
勢いよく流れ続ける雲の切れ間から、月の光りが瞬きのように、時折砕ける波を照らしていた。






ranking banner ランキングに参加しています。応援のクリックをお願いします!







このブログへのご意見、ご感想がありましたらEメールにてtastas65*yahoo.co.jp
(*マークを@に変えてください)のアドレスにぜひお寄せください。
また、お仕事のご相談、依頼も大歓迎です!
ranking banner

by somashiona | 2007-06-07 01:51 |

<< previous page << 雨が降れば、バルビゾン派 | さよならロースベリー、また会う... >> next page >>