雨が降れば、バルビゾン派



サリーナの家を朝の5時に出た。
心はすでに昨日のビーチ。
あまりにも自分の気持ちとクロスオーバーした昨日の風景写真体験を、今日も味わえると信じて疑っていなかった。

しかし、まだ真っ暗な朝のローズベリーは土砂降りの雨。
いいんだ。暗いうちにどんどん降って、朝の美しい光りが射し込んだ時に、雨が上がればいいのさ。
ワイパーが追いつかないほどの激しい雨を車のフロントガラスに浴び、視界の悪い山道を僕は走らせた。

空が白んできた。
しかし、相変わらず激しい雨。
車内の窓ガラスは全て曇りっているので周りの風景には目もくれず、目の前をくねくねと曲がり、どこまでも続く白い道に気持ちを集中させた。
この日が旅の最終日だというのに、こんな雨じゃいい写真など無理だ。
鼻歌の一つも口からは出てこなかった。




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やっとビーチに到着した。
荘厳な朝日を浴びた昨日の激しい波が僕を待っている予定だったが、どこもここも前が見えないほど雨で真っ白。
「これじゃ撮影は無理、少し待ってみよう」
僕はエンジンを切って、運転席のシートを倒した。

もの凄い寒さで目が覚めた。
「Shit! 寝ちゃったよぉ〜!」
せっかく張り切って朝早くここまで来たのに、2時間以上も寝てしまった。
せめてもの救いは、雨も風も、寝る前とまったく同じ状況ということくらいだろう。
本物の土砂降り。
僕はカッパを着込み、カメラにビニール袋をかぶせ、思い切って外に出てみた。
昨日のスポットまで風に吹き飛ばされそうになりながら歩き、三脚を立てたとたん、風で三脚が吹き飛んだ。「Fuck!」
カメラを守るつもりだったビニール袋の中にはたっぷりと水がたまり、僕の下着もすでにお洩らし状態。
5分だけそこにいたが、諦めて車に戻った。
カッパのまま運転席に逃げ込んだせいで、シートもずぶ濡れ。
僕は何度も首を横に振りながら、来た道に向かって車をゆっくり走らせた。
「なんでこうなるの?全然だめじゃん、、、。風景写真を撮る旅なのに、昨日の2時間だけで終わってしまうわけ、、、Fuck! Fuck!」
普段は穏やかな性格の僕だが、写真のことになると喜怒哀楽の激しい男に変身する。
しょんぼりと車を運転していた僕は、唐突に車を道の真ん中に止めた。
どうせ対向車など来やしない。
曇った車内のガラスを手で拭き、鼻を窓にくっ付けてしばらく何もない周りの風景を眺めた。
曇りガラス越しの風景はルソーやミレーなどの自然主義バルビゾン派の絵のようだった。
「よぉ〜し、そとが雨なら、バルビゾン派でいこう!」
突然、僕のクリエイティブ・スピリットに火がついた。
一度火がついてしまうと、見るもの全てがフォンテーヌブローの森のような、素敵な被写体に思える。
「そうだよ、木、木を撮んなきゃNATUREAさんと張り合えないじゃん。
でもこの辺りに巨木はないなぁ、、、まっ、いいか!だってバルビゾン派だから」
雨が横に降っているせいで窓を開けると3秒で車内がびしょ濡れになる。
そこで車の曇りガラス越しに写真を撮る作戦に出た。
「特製土砂降りソフトフィルター」と名付け、僕はほくそ笑んだ。
レンズはキャノン70mm-200mmf2.8。
感度を400にしてもシャッタースピードは1/60秒前後。
これじゃブレてしまう。
でも、バルビゾン派ならブレたほうがムードが出るというもんだ。




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朝は見向きもしなかった白い道で、数メーター車を移動しては止まり、ガラス越しに写真を撮るということを、何度も繰り返すうちに雨脚も少し弱まってきた。





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かなり集中したので幹線道路に出たとたんドッと疲れが出た。
運転席も下着も相変わらずびしょびしょ。
もう、何も考えたくなかった。
唯一考えられることといえば、この日まだ口にしていないカプチーノに一刻も早くありつきたいということだけだった。

ところで、僕はバルビゾン派のことをほとんど何も知らない。
ただ言葉の響きが印象派より好きだったのでその単語を使っただけだ。
タイトルをしっかりと考えなくてはいけないというプレッシャーがそういう言葉を使わせるのだろう。
突っ込みを入れないようにしてほしい。
これで今回の旅の話しは終わりにする。
お付き合いいただいて、ありがとう。
やっぱり、旅はいいもんだ。
どうしてもこれが止められない。
子どもの頃に観た「兼高かおる世界の旅」と永六輔さんの「知らない町を歩いてみたい」の影響だろうか?(あらっ、知らない?)






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by somashiona | 2007-06-07 23:03 | デジタル

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