ピーターとラジコン飛行機



「ヘイ、マナブ、ハウズゴォーイン?これからラジコン飛行機を飛ばすんだ。一緒に来ないか?」




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親友のピーターからの電話だ。
新聞、雑誌を中心に活躍する、アデレード出身のベテラン・フリーランス・フォトグラファー。
彼との出会いによって僕のタスマニアでの生活は大きく変わった。
僕と僕の写真を好きでいてくれる彼の紹介でオーストラリアのメジャーな新聞の仕事やロイター、AP通信の仕事のチャンスも得ることができた。
フリーランスのフォトグラファーが自分のクライアントに他のフォトグラファーを紹介するのがどういうことなのかよく知っているだけに、彼の優しさにはとても感謝している。
彼は僕のフォトショップの師匠だ。
コンピュータ音痴の僕がなんとかフォトショップを使いこなせるようになったのは、他でもない彼のおかげだ。
それだけではない。
普段友人たちに滅多に連絡しない僕に対して3日おきごとくらいに電話をくれ、食事やパーティ、そしてアウトドアに誘い、多くの人たちとの出会いの場や素晴らしい経験を提供してくれるのも彼だ。


ティーンエイジャーの時に海外に住みはじめた人は別だが、僕の知る限り、日本人の海外移住者が親友と呼べるその国の人間を得るのは難しい。
知り合いはたくさんできるだろう。
だが、なんでも心置きなく話せ、たまには激しい議論やケンカをし、また仲直りできる親友を作るのは本当に難しいのだ。
だが、この親友と呼べる人ができると異国の地での生活は驚くほど一変する。
今までよそ者だった人間がやっと社会の輪に参加できる瞬間であり、同時にここに住む同胞の日本人を違う視線で見ることができるようになる瞬間でもある。
これは海外に長く住む日本人にしかわからない感覚かもしれない。
2、3年の滞在では実感できないことだ。


僕とピーターは仕事に対する態度が似ている。
一番似ていることは心配性なことだ。
今週は仕事が入るかどうか?
入れば入ったで、その仕事が上手くいくかどうか?
撮影中は、何かバカなミスをしていないかどうか?
ベストショットにピントがきちんときているかどうか?
撮影後、クライアントがそれを気に入ってくれるかどうか?
請求書の額は妥当かどうか?
来週は仕事が入るかどうか、、、、。(つづく)

僕たちは知らず知らずのうちに、いつも小難しい顔をしている。
それを実感できるのはリラックスして遊んでいるピーターの顔を見ている時だ。
彼はもともと少年のように純粋でフラジャイルな男だが、リラックスして遊ぶ彼の顔を見ると、ああ、これが本来の彼なんだ、とつくづく思う。
彼はよく「Bloody Photography!」と言うが、彼ほど写真を愛する人間はいない。彼の撮る写真は正確で隅から隅までよく考えられている。いつもごたごたしている現場、短い時間でよくあんなにもしっかりとものを見れるものだ、と彼の写真を見るたび僕は感心してしまう。




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ラジコン飛行機を飛ばすため、僕らが行った場所はホバートから車で15分ほどの小高い丘だった。彼のラジコン飛行機はグライダーなのでいい風と広い場所が必要なのだ。
「マナブはきっとあの丘を気に入るよ」と彼は言っていた。
牧草地として使われているその丘は私有地であり、ラジコン飛行機を飛ばすためピーターがあらかじめその丘の所有者を見つけ、立ち入りの許可を取ってあった。
前にもこのブログで書いたが、僕は「丘マニア」だ。
丘を見ると写欲が湧く。
美しい丘はたいてい私有地なので中に入ることができない。
だか、この日の丘は美しい上に中に入ることができる。
広々とした丘でラクダ色の牧草が風になびく。その中にポツリポツリと立つ骸骨のように真っ白なデッドツリー。
空にはもくもくと白い雲が浮かび、眼下に広がる海の向こうにはホバートが見える。
この場所が完全に気に入ってしまった。
いや、恋に落ちた。




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見渡す限りピーター以外の人がいないのをいいことに、僕は年甲斐もなく、飛び跳ね、何度も何度も雄叫びを上げながら、写真を撮っていた。
ピーターも何度か飛行機を墜落させては笑い、飽きることなく空を舞う飛行機を目で追っていた。




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だだっ広い丘をあちこちへ移動しているうちに、やがて西日が射し、辺り一面が琥珀色に染まった。
その中を黄色いラジコン飛行機をもって歩くピーターもゴールドに染まり、その顔は幸せ色に染まっていた。
きっと子どもの頃もこの時間になると家路に向かい、西日に染まった同じ顔で草原の中を歩いていたのだろう。








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ピーターのポートフォリオはウェブサイトで見れます。
http://www.petermathew.com.au/
ぜひ覗いてみてください。
これがこちらの新聞写真のレベルです。
クオリティが高いんです。
彼にメールなんかを送ると喜んじゃうかもしれません。
あなたの英語の間違えを恐れなくても大丈夫!
日本に住んでいたことがある人なので、言いたいことは理解できます。






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by somashiona | 2007-06-16 10:16 | 人・ストーリー

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