日本のメディアよ、立ち上がれ!
先週オースラリア中を大いに沸かせたニュースがあった。
すでに日本でもニュースになっていたと思うが、ちょっと聞いて欲しい。
APECが開かれているシドニーの中心街はどこもここもバリケードとポリスで埋め尽くされていた。
交通は麻痺し、多くの商店では商売が成り立たず、近辺のレストランではナイフやフォークの使用が禁止された。
そんなただならぬ状態をカメラに収めようと記念写真を撮った観光客は直ちに捕まえられデジカメの映像削除を命令されるし、APEC反対派のデモとポリスの衝突を追いかけていたニュースペーパーの女性フォトグラファーも警察に突き飛ばされカメラをかばって怪我をした。
この警備にとてつもない額の税金が使われていることで市民の大ひんしゅくを買い、おまけに守っているのがブッシュを筆頭とする世界を乱す人間たちなのでテレビや新聞でAPECのニュースを見るたびに皆がいらだっていた。
そんな厳重な警備の中、APEC立ち入り規制区域の中をAPECとは無関係の黒塗りの車2台が悠々と突破し、ブッシュの宿泊するホテルの10メートルまで接近した。
この黒塗りの車はAPECのVIPを装っていたが皆が首からぶらさげていたIDカードにはこれは単なるジョークだとハッキリ書かれていたし、車の中にはオサマ・ビンラディンに扮した人物まで乗っていた。
これはABCテレビの番組「チェイサー」が仕掛けた悪戯だった。
この番組はコメディアンたちが政治や社会の矛盾を風刺する番組だ。
莫大な税金を投資して行なわれているオースラリア警察が威信をかけた警備がどれだけのものか試されたのだ。
そして結果は惨憺たるものだった。
チェックポイント2カ所めでこれ以上近寄ると本当に大変なことになると判断した番組制作者が引き返したところを引き止められ、プロデューサー、カメラマン、コメディアンなど11人がその場で逮捕された。
この模様をブッシュのホテルであちらこちらに張り付いているスナイパーたちはたぶんライフルのスコープ越しに見ていただろう。
オサマ・ビンラディンに扮したコメディアンが車から出てきたときは引き金に指がかかったかもしれない。
ABCテレビといえばオーストラリアの国営テレビだ。
日本で言えばNHKの番組での不祥事だ。
これは番組の制作会社が勝手にやったことでABC側はまったく知らなかったと主張した。
だが、確信犯に違いない。
警察当局はもちろん激怒した。
悪ふざけにもほどがあるし、まったく面白いジョークではない、と警察のトップはコメントしたが、このニュースが流れた日、僕の出会った全ての人たちがこのニュースの話しをし、大笑いしていた。
こんなに嬉しそうにニュースの話しをする人たちを見たのは久しぶりだ。
たぶんビーコンズフィールドでの鉱夫救出劇以来だろう。
ABCは昨夜この模様を「全て見せます編」でしっかりと放映していた。
僕はこのニュースに笑ったというよりも、むしろ感心した。
国の言いなりにならないメディア、国民の声をしっかりと受け止めるメディア、信じることの為に危険をも承知でメッセージを送ろうとするメディア。
最近日本ではテレビ局が何かと問題を提起している?じゃなくて、問題を起こしているらしいがNHKにこういうことをするガッツがあるだろうか?
ABCは受信料など取らない。
紅白のくだらない人気取りを気にするくらいなら、もっと国や国民の精神に活を入れるくらいの番組を作って欲しい。
テレビでも、雑誌でも、ブログでも今の日本を見るとぬるいとか、ゆるいとか、そんな言葉ばかりが海外に住む僕の耳に届く。
世界中の国々が、世界中の人たちが、あらゆる物事に対して日々戦っているということをちゃんと知っているのだろうか?
残念ながら今の日本の国民性を作っているのはテレビだと僕は思っている。
日本におけるテレビの影響力は海外に住むものの目から見ると尋常ではない。
そのテレビにガッツが無く、ぬるい、ゆるい系の番組や情報を繰り返し流していると、日本人は世界から間違いなく取り残されると思う。
そして本当の喜びも、本当の怒りも、恥ずかしさも、誇りも、愛も、感じられず、結果生きてはいるが手応えの無い人生を多くの日本人が送ってしまいそうな気がする。
たぶん、余計なお世話だろう。
でも、家族同様、愛する自分の国に余計なお世話をせずにはいられない。
日本のメディアに携わる方々、ぜひ日本人に良いお手本を見せてください。
Hobart, Tasmania
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by somashiona | 2007-09-13 18:57 | B&W Print