夢想家が歩く





考え事をしながら、牧場のフィンス沿いを歩いていた。
無意識に伸ばした右手の指先に当たる、枯れ草の感覚を楽しみながら。



子供の頃の一日は長い。
一歩家の外に出れば、石ころや折れた木の枝、全てがオモチャ。
頭の中で空想のストーリーが動き出せば、見るもの全てが映画のセットだ。
友達とケンカした日も、先生に怒られた日も、落ち込んでは入られない。
頭の中だけは100%、誰にも邪魔されない自由な世界。
一日が、永遠に思える。
だが、ふと見上げた空が紅くなっていれば、もう家に帰る合図。
家々から夕食の支度をする匂いが漂いはじめる。
夕食に送れると、お母さんに怒られる。



大人の一日は早い。
起き抜けのコーヒーといくつかのサプリメントを胃に流し込んだ途端、ジェットコースターのような一日が始まる。
月曜と金曜の間の事など、捨てられていく新聞のように忘れ去る。
夢見るような美しい話を聞きながら、現実的な粗探しをはじめ、頭の中の空想のストーリーは、預金口座が膨らまないと解った瞬間、しぼんでしまう。



考え事をするなら、歩きながらがいい。
携帯電話を車のダッシュボードへ放り込み、人のいない空間へ移動する。
大自然でない、人の足跡が残る、程々の自然空間がいい。
土と草の匂いで鼻腔を満たし、風と太陽の光りで肌を洗う。
子供じみた事を考えよう。
誰も頭の中は覗けない。
バカな夢想を楽しもう。


肌を包む空気が湿り気を帯びてきた。
ふと見上げると、重く、巨大な雲が、紫色の空に浮かんでいる。

雨が降る。
帰らないと。
早く帰らなくちゃ。

踵を返した瞬間、大粒の雨が頬に当たり、涙のように流れた。








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Hamilton, Tasmania



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by somashiona | 2007-10-01 14:34 | デジタル

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