シングルマザー その2



部屋に入ると彼女と子供はまだベッドの中。
僕と一度目を会わせたが彼女は再び眠りに落ちてしまった。

最初に目を覚ましたのは彼女の子供。
大きなあくびをして、トイレに行って、さあこれから一日が始まる、と思ったら、彼はまたベッドに戻り、すやすやと寝息を立てる。
やっと目を覚ました彼女に向かって、僕は早朝に押し掛けたことを詫びたが、彼女は「朝早く起きられてよかったわ」と言って笑うだけだった。
軽い朝食をとりコーヒーを飲んだあと、彼女は昨夜使った食器を洗い、家を掃除するため掃除機かける。
その音で子供もやっとベッドから出てきた。



なんだかいい写真が撮れそうだ、と僕の重い心にやっと希望の光が射してきた。
しかし、そう思ったのもつかの間、ドン、ドン、ドン!誰かが激しくドアを 叩く音が聞こえた。
パジャマの上にローブを羽織った女性が泣きじゃくりながら部屋に入ってくる。
ドアの外からは男の怒鳴り声が聞こえる。


なんだかまずいことになってきたみたいだ、、、。


どうやらこの女性はこの部屋の真上に住む人らしく、早朝からボーイフレンドと大喧嘩をし、暴力を振るわれたらしい。
ドアの外の男の怒鳴り声は段々と大きくなり、眠りを妨げられた住民たちが怒りをぶちまける大騒動にエスカレートした。


警察が乗り込み、大家さんの命令でホテルの住民全員が一時野外に退去させられた。


僕は心の中でFワードを連発していた。
ジーザス!フ○ック!どうしてこんな時にこんなことがはじまっちゃう訳?
みんな、どうして僕の邪魔をするの?ファイナルアサイメントが、、、。
僕の心の叫びは誰の耳にも届かない。


この騒ぎが起きたとき、「すぐにカメラを鞄にしまい込むのよ!」ととても強い口調で僕を招いてくれたシングルマザーから言われた。
野外でホテルから出てくる住民たちを見ているとその訳がよくわかった。
ドラッグの売人、コールガール、全身入れ墨男、半分サイボーグのように体中に医療器具が巻き付けられている老人、どこからどう見ても気質じゃない人たちばかりだ。
人に居場所を知られたくないこの人たちが僕のカメラを発見したら大変な事になっていただろう。
というか、僕がそこにいることじたい、すでにかなり問題だった。



事態が治まり僕たちが部屋に戻れるまで、かなりの時間がかかった。
問題の暴力ボーイフレンドは警察にしょっぴかれ、泣き崩れる暴力を振るわれた女性を慰めることにさらに多くの時間が費やされた。
この作業にはコールガールと思われる若い女性も加わった。



この時点で、既にかなり長い時間をこのホテルで過ごしていたが、男の子の話し声をほとんど聞いていない事に僕は気がついた。
皆が落ち込めば、彼もその傍らでしょんぼりし、皆が笑えば彼も笑う。
まるで、このホテルの暗い廊下で太陽の光にさらされる彼だけが、ここに住む者の唯一の希望のように思えた。












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by somashiona | 2008-03-21 10:52 | B&W Print

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