6月の花嫁 最終回
ジューン・ブライドということでウェディングフォトを続けて見て頂いた。
ここで紹介したのはあくまでも僕の体験談だ。
ウェディングを専門に撮る方が見ればきっとコメディだろう。
コメディといえば、結婚式写真を僕に依頼したお客さんに写真をお渡しするとき、笑える写真を番外編で出来るだけ用意するようにしている。
ジャッキー・チェン映画の終わりで流れるNG集みたいなものだ。
しかし、これはあくまでも余力があればの話。
シリアスな写真というのは案外撮れるものだが、笑える写真を狙って撮るのは僕には難しい。
僕は人を愉快な気持ちにさせられるタイプの人間ではないし、自然発生的に湧き出た笑いをフレームに収められず、悔しい思いをすることも多々ある。
写真を趣味としない人たちが旅行などで友人たちと一緒に撮った写真を見る場面に出くわすことがある。
プリントした写真を手に取り、一枚、一枚順を追って見るとき、手がとまる場面は笑える写真であることが多い。
時にしげしげと写真を見てニヤリとし、ときに腹を抱えて笑う。
こういう写真にはどんな美しい風景写真も敵わない。
思い出の写真を見て大笑いする時、その人たちは間違いなくハッピーなのだ。
写真が誰かを幸せにしている瞬間だ。
僕の大好きな写真家エリオット・アーウィットの写真を見るたび、僕はクスッと笑ってしまう。
そんな写真を撮れる人になりたいが、こればっかりは修行して撮れるものではない。
#4のウェディングでは花嫁さんを撮りながら、何度も僕は吹き出してしまった。僕がお客さんを笑わすのではなく、お客さんが僕や周りの人たちを大いに笑わせてくれた。
6月の花嫁の締めはそんな「おてんば花嫁さん」のスナップでいこう。
彼女、結婚式を前に間違いなく緊張していた。しかし天性の明るさは緊張と混じりあった結果、彼女をハイテンションな状態にしていたようだ。しっとりとした写真を撮りたい僕の思惑とは裏腹に女たちの部屋では常に奇声が飛び交う。
牧師さんが二人の愛の試練について、神聖な言葉を続ける。
だが、牧師さんの発したある言葉が彼女の笑いのツボにハマってしまった。
笑ってはいけない場だと思えば思うほど肩が震える。
そして、とうとうはじけてしまった。
そんな彼女の笑い声は参加した人たちにも徐々に伝染し、先ほどまで神妙な顔をしていた新郎や牧師さんまでも、つられてしまう。
しかし、さすがは神に仕える牧師さん、言葉続く。
誓いの言葉を言う彼女、笑いすぎたせいか、文字通り舌を噛む。
そんな彼女のかわいらしい姿を見る人たちは常に微笑みを浮かべ、会場からは笑い声が絶え間なく響く。
彼女の身体の線を見て気がついた方もいると思うが、彼女、バリバリのアスリートだ。トライアスロンやアドベンチャースポーツ系にむちゃくちゃ強いらしい。
「タキシード姿の男性たちに囲まれた可憐な花を撮りますからねぇ〜」
「あ、、、花嫁さん、マッチョなポーズじゃなくて、、、か、可憐、、、」
「それじゃ〜、今度は男性陣だけ。渋ぅ〜い写真でいきますよぉ〜」
「あ、そこのあなた!子供みたいな顔してピースサインを出さないで!」
「はぁ〜い、みなさぁ〜ん、集合写真いきますよぉ〜」
「それぞれ好きなポーズで決めてくださいねぇ〜」
「やっぱりポーズは僕が考えまぁ〜す!」
大人も子供も、集合写真を撮る前は身体を動かしてもらうとリラックスした顔になる。ジャンプ写真のいいところは僕の指示や号令に従う態度がここで出来ること、皆が一緒になって何かをやるという気持ちを作れること、笑いが生まれることにある。ウォーミングアップのつもりで撮るカットだが、お客さんはジャンプ写真のあがりを期待する。みんな楽しそうでしょ。
「じゃあ次は、ちょっとセクシーポーズでいきましょーかー!」
「あ、あっ、ちょっとやりすぎでぇーす!」
ちなみにこの花嫁さん、海外から引き抜きがかかるほど優秀ながん細胞の研究者だ。
文武両道を兼ね備えた素晴らしいお嫁さん。
幸せな人生を送るに違いない。
ウェディングフォトシリーズ、お付き合いいただき、ありがとぉ〜!
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by somashiona | 2008-06-16 14:53 | 仕事