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秋の夜長に、一提案




以前、僕と友人たち三人(男1人オージー、女2人オージー)でブッシュウォーキングに行ったときの事だ。
片道約3時間のドライブ。
車中、行きはわいわいと騒ぎながらあっという間に時間が過ぎるのだが、帰りは約5時間のブッシュウォーキングを終えた後ということもあり、皆黙りがちだった。
それでも、懐かしい歌イントロクイズ、感動した映画ベストテン、最悪の映画ワーストテン、などなど日本人でも車の中でやりそうな事をしながら時間が過ぎていった。
一人が「物語の作りっこをしよう!」と提案した。
誰かが適当に5分間ほど物語をでっち上げ、次の人がその物語を続ける。
自分の都合のいいように続けてもいいが、それまでの物語のトーンをぶち壊すような事をしてはいけないというのがルールだ。

車の中にいた友人たちは皆、大の読書家だったのでその提案に大賛成だった、、、僕を除いては。
僕の反対の理由は極めて単純、英語力の無さだ。
英語でメールの一つを出すのにも四苦八苦するのに、物語だなんて、ムリ、ムリ、と主張したが、簡単に却下された。
皆の優しい心遣いで、僕から物語をはじめてもいい、という事になった。


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気がつくと、男は大きな屋敷のドアの前に立っていた。
どれくらいここにいたのだろう、、、。
前後の記憶がまるで無い。

屋敷の周りを見渡すと伸び放題の雑草がクモの巣のように地面を覆いつくし、おそらく日が落ちた直後であろう青紫の空には枯れた木々シルエットが黒く浮かび上がっている。

彼の背丈の倍はあると思われるその木製のドアには手の込んだ彫刻が施されていたが、長い歳月の風化によって、年老いた女の化粧のように塗料がはがれ落ちていた。
目立たないが、よく見るとドアの端に、さびたスティールで縁取られた鍵穴がある。
なかば反射的に、男はチャコールグレーのスラックスのポケットに手を入れた。
金属製の冷たい感触が指先に当たった。
ポケットから取り出し、薄暗い空に向けてその金属片をかざしてみた。
「鍵、、、。」
男は自問するように呟いた。
と同時に鍵を取り出した手のひらが血で染まっている事に気がついた。


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次の語り手がこの話しの続きをはじめる。
それぞれの語り手の想像力が予想以上働いた。
血まみれの格闘シーン、手に汗握るカーチェイス、お待ちかね官能シーン、成熟した大人の粋な会話、、、。
この物語は1時間以上も続き、それはそれは面白いサイコスリラーを全員が楽しんだ。

なかでも一番楽しんでいたのは、最初にあれだけ嫌がっていた僕だったような気がする。
なんといってもハヤカワミステリーファンなので、この手の話しには目がないのだ。

日本ではこれから読書の秋。
深まりゆく秋の夜長、たまには友人たちとこんな遊びをするのも、面白いのではないか?






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Queenstown, Tasmania






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by somashiona | 2007-10-03 15:14 | B&W Print

夢想家が歩く





考え事をしながら、牧場のフィンス沿いを歩いていた。
無意識に伸ばした右手の指先に当たる、枯れ草の感覚を楽しみながら。



子供の頃の一日は長い。
一歩家の外に出れば、石ころや折れた木の枝、全てがオモチャ。
頭の中で空想のストーリーが動き出せば、見るもの全てが映画のセットだ。
友達とケンカした日も、先生に怒られた日も、落ち込んでは入られない。
頭の中だけは100%、誰にも邪魔されない自由な世界。
一日が、永遠に思える。
だが、ふと見上げた空が紅くなっていれば、もう家に帰る合図。
家々から夕食の支度をする匂いが漂いはじめる。
夕食に送れると、お母さんに怒られる。



大人の一日は早い。
起き抜けのコーヒーといくつかのサプリメントを胃に流し込んだ途端、ジェットコースターのような一日が始まる。
月曜と金曜の間の事など、捨てられていく新聞のように忘れ去る。
夢見るような美しい話を聞きながら、現実的な粗探しをはじめ、頭の中の空想のストーリーは、預金口座が膨らまないと解った瞬間、しぼんでしまう。



考え事をするなら、歩きながらがいい。
携帯電話を車のダッシュボードへ放り込み、人のいない空間へ移動する。
大自然でない、人の足跡が残る、程々の自然空間がいい。
土と草の匂いで鼻腔を満たし、風と太陽の光りで肌を洗う。
子供じみた事を考えよう。
誰も頭の中は覗けない。
バカな夢想を楽しもう。


肌を包む空気が湿り気を帯びてきた。
ふと見上げると、重く、巨大な雲が、紫色の空に浮かんでいる。

雨が降る。
帰らないと。
早く帰らなくちゃ。

踵を返した瞬間、大粒の雨が頬に当たり、涙のように流れた。








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Hamilton, Tasmania



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by somashiona | 2007-10-01 14:34 | デジタル

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