芸術家・黒田晃弘さんのプロジェクト
少し古い話になるのだが、どうしても今ブログに残しておきたい。
2012年から2013年にかけて「さっぽろ100人プロジェクト」をやった時のことだ。
文字通り100人の素敵な人達との出会いだったのだが、その中でも特に大きな影響を僕に与えてくれた人が、木炭で似顔絵(人仏画)を描く芸術家の黒田晃弘さんだった。
彼を僕に紹介してくれたレストランのオーナーは「とくかく、口じゃ説明できないけど、会って、似顔絵を描いてもらったら、それがどんなに不思議で素晴らしい体験なのかわかるからっ!」と言った。
画家対写真家のポートレイト対決となった彼との出会いは、実際に不思議で素晴らしい体験だった。
貸切状態のレストラン、小さなテーブルを挟み僕と黒田さんは向かい合った。
テーブルの上には黒田さん自作のデッサン用木炭紙と木炭。
僕はディフューザー付きアンブレラとEos 5Dで構える。
「名前を教えて下さい」と言われたので僕は自分の名前を告げた。「漢字ですか、それともひらがな?」と聞かれ、カタカナだと僕が言うと、黒田さんは木炭紙の上に僕の名前を書いた。
あれっ、似顔絵じゃないの?と思っていると、黒田さんは木炭紙の上に木炭の灰をパラパラと落とし、中央に自分の手を置いた。
「僕の手の上にマナブさんの手を重ねてください」と言われ、僕はちょっと驚いた。
「こんな感じでいいんですか?」とまだ会って数分も経っていない男性の手の甲に僕は自分の掌を重ねる。
すると黒田さんはその手を木炭紙の上でグルグルと回し始めた。
「僕の手に心を集中して、動きに合わせてください」と黒田さんは言い、僕は内心「こっくりさんか、、、?」と思う。
先ほど書いた僕の名前や木炭紙に落とした黒い灰が黒田さんの掌で引き伸ばされ、かすれ、そしてそれは、ぼんやりとした一つの円となる。
彼の手から僕の手を離した後、彼は僕に様々な質問を投げかけ、僕はその質問の答えを直感的に返していく。僕の答えを聞くたびに木炭紙の上の黒田さんの手は動き、かすれた黒い灰の円の中にカタチにならないカタチが生まれては、また姿を変えていく。
一つ一つの質問が、どういうわけだか僕が普段思っていること、感じていること、こだわっていることと直結し、不思議と僕の心が開放されていくのがわかる。
まるで心理学者のカウンセリングを受けているようだ。
良いポートレイトを撮るためには、被写体にフォトグラファーをできるだけ早く信頼してもらう必要がある。一緒にいい写真を作るのだ、という気持ちになってもらわなくてはならない。
ライティング、構図、シャッタースピード、絞り、テーマなどが一度決まったら、技術的なことは一度忘れ、コミュニケーションを深め、観察に観察を重ね、被写体と一体となって撮るべきものを探し出さないといけない。
高級な機材や豊富な撮影の知識を持っているだけでは表現できない世界こそが、ポートレイトの醍醐味だ。
コミュニケーションを短い時間で深める効果的方法は笑いと物理的に触れ合うことだ。
しかしもちろん、これが許される人(フォトグラファー、被写体)もいればダメな人もいるし、許されない状況や環境もある。
少なくても黒田さんはこれが許される数少ない人間の一人で、僕が黒田さんの手に自分の手を重ねた時点で、僕はすっかり黒田さんの掌の中なのだ。
写真を撮るのと比べ、被写体を目の前に人物画を描くのには時間がかかる。
写真の場合、被写体がフォトグラファーと一心同体にならない場合、時間の経過とともに被写体の表情から生命力が消えていく。
黒田さんのアプローチ(いやこれはそういう技術論ではなく何かを創造する者の姿勢の問題だろう)には本当に感銘をうけた。
時間の経過とともに黒田さんの僕を見る眼光が鋭さを増す。
まるで衣服を一枚ずつ剥がされ、心のなかをすべて見られているような感じだ。
僕は僕で、そんな黒田さんのオーラを捉えようと必死に黒田さんを見つめ、シャッターを切る。
ポートレイトを撮っていて、こんなに被写体と火花を散らせたことは今までかつて一度もない。
黒田さんが人物画を描く様子はまるでお産する妊婦のようだ。
全霊を込めて何かを創りだす人間のオーラを感じる。
世界に一人しかいない自分という人間を、どこかの誰かが全身全霊で描きだしてくれたあの時間は、僕にはとてつもない感動だった。
絵でこんなに人を感動させられるのか!それなら僕は写真でもっと多くの人に同じ感動をしてもらいたい。
随分と前から考えていたことではあったが、タスマニアに住む一万人のポートレイトを撮るプロジェクトを本当にはじめようと思ったのは、黒田さんが僕に与えてくれた感動があったからだ。
人との出会いには必ず何かの意味がある、そんなことをあらためて考えさせられた一日でもあった。
そんな黒田さんがプロジェクトをはじめた、というかもうすぐ終わってしまうのだが。
札幌の教会風古民家をアートスペースとして再生するプロジェクトだ。
その為に必要な費用が不足し、クラウドファンディングを通して支援を呼びかけている。
目標金額は400,000万円で、達成まであと90,000円だ。
あと9日間で目標に届かなければ、今までの達成金額310,000円は無かったことになってしまう。
黒田さんは「絵を描くことをとおして、人の世界に貢献したい」という想いで芸術活動を続けている。
「アトリエランプ」と黒田さんが名づけたこのアートスペースが完成すれば、僕が味わったような素晴らしい経験をする人たちが増えるだろう。
本当のアートは人に生きる意味や力を与えてくれるもの。
皆さんも是非彼に力を貸して欲しい。
黒田さんのプロジェクトへの支援は「ここで」
アトリエランプ再生プロジェクトのホームページは「ここで」
アトリエランプのFACEBOOKは「ここで」
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僕の夢は「写真を通して人の役に立つこと」、黒田さんとスタンスが似てるんだなぁ〜。
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# by somashiona | 2014-11-10 18:41 | 人・ストーリー